一般的にビジネスの世界においては、お互いに商品の品質や金額など様々な条件について個別に交渉しその内容について決定することが少なくありません。ですが、一般的に広くサービスを提供することが業務の中心となっている通信事業ではあらかじめ約款等にサービスの内容やその品質、及び金額などを提示しこれに基づいて利用者と契約を結ぶことが多くなっています。
これは通信サービスの公平性やその管理の簡略化をするために非常に重要なサービスの提供形態ですが、提供するサービスの特殊性やその数量の特殊性などを鑑み顧客と個別に契約を結ぶことがあります。
これを相対契約と呼び、一般の約款に基づく契約とは異なるものとして管理されています。
相対契約を用いる場合は大口の法人であることが多く、その提供形態も一般の利用者に提供する約款に記載されたサービス内容とは異なることがほとんどです。
例えばインターネット回線の場合インターネットを利用する目的で敷設することが多いのですが、あえてこの回線をVPN専用回線として特殊な用途のみに利用します。また一般には提供していない専用のルーターなどを設置し、その管理を合わせてサービス提供事業者が住宅する場合などは約款で定義するサービスの提供形態とは異なる品質が要求されたりします。
通常は約款外契約であるこれらのサービスの提供は行わない事業者が多いのですが、顧客が法人の大口顧客である場合や、共同で新たなサービスを末端のユーザに提供する場合などは相互の負担を適正化するためにサービスの内容に準じて相対契約を行うことも多くなっています。
相対契約を行う場合には品質やその維持に関する費用について十分に検討行い、その妥当性を考慮することが重要となります。また数多くの約款外契約を行っている場合には通信事業法により様々な問題を生み出す危険性があるため、その契約の根拠となる妥当な理由を明確にすることが重要です。
一般の顧客の中にも約款に記載されていない高い品質サービスやその他の特殊な要件を持つサービスを提供してほしいと希望する利用者が多いので、特定の法人に対して相対契約を結ぶ事は一般の顧客に対する不公平感を生み出す要因となる危険性があるので注意が必要となるのです。
さらに一般に通信サービスを行う事業者は総務省に対して通信事業者としての認可を受けるために約款の提出が義務付けられています。この約款に対して異なるサービスを提供する場合には様々な手続きを必要とする場合も多く、その手続きにかかる費用も充分に考慮して料金を割り出す必要があります。
また、安定的なサービスを維持するために様々なサポート体制を整えるのが一般的ですが、約款が1契約の場合にはその品質を維持するために特殊なサービス提供体制を整えなければならないこともあります。そのため標準的なサービスの提供に比べて大幅にコストがかかることが予測されるのです。
以上の理由から非常に特殊な例を除いて通信サービスにおいては相対契約はあまり行われていないのが実態です。
多くの通信事業者は約款をもとに基本的なサービスを提供していることが多いですが、基本的な通信サービスをもとに異なる特殊なサービスとして提供を行っている場合も少なくありません。約款外契約は通信事業者として非常に大きなリスクを生むことになると考えられている側面もあり、多くの場合には基本的な通信サービスの品質は変更せず約款に従った形で提供しその契約も一般の契約として行うことが多いです。さらに必要な様々な品質の確保やネットワークのサポートなどを提供する場合には異なる会社のサービスを組み合わせて提供する形とすることが多くなっています。