トーンダイヤルとは、プッシュ式の電話機でトーン信号を使い電話をかける方式を指します。開発されたのは1950年代で、程なくして電話機の信号伝送方式に採用されました。
トーン信号は、8種類の周波数帯域を高い周波数のグループと低い周波数のグループの2つに分け、各グループから1つずつ周波数をえらんで生成した合成信号のことです。合成信号は16種類つくることができ、それぞれに数字や記号を割り当てることでメッセージを生成します。
現在は国際電気通信連合(ITU)によって規格化されており、0から9までの数字、A・B・C・Dの4つのアルファベット、アスタリスク記号、シャープ記号を送ることができます。
トーンダイヤルで用いられる周波数帯はすべて可聴域におさまっているため、人間は耳でピポパという信号音を聴き取ることが可能です。実はこの仕組みを利用すると、プッシュボタンを一切押さずに電話をかけることができたり、固定電話機から別の電話機にダイヤルをさせることができ、実際にこのようなことをさせられるスマートフォンアプリも開発されています。
また、信号の波形さえあっていれば、笛や音叉、人間の声などを使うことでも発信することができますが、電話機以外の機器で発信させる行為については、法的な面や倫理的な面で問題が生じる可能性があるので注意が必要です。
トーンダイヤルの技術は、現在では電話をかけるときだけでなく、簡単な数字や記号の入力をさせたいときにも使われています。
例えば家電製品において、故障したときや操作上でわからない事が出てきた時に製造元のコールセンターに問い合わせると、該当する番号を選ぶ旨の音声ガイダンスが流れ、指示にしたがってボタンを押すと次の質問へと進み、最終的には担当部署に電話がつながります。
また、新聞やテレビ局が世論調査を行う際にも用いられることがあり、該当するものに当てはまる番号を押すことで支持政党や政策の賛否などについて回答することができます。