データを伝送する方法には、複数の種類があり、マルチキャストはその中の代表的なものです。
1つの地点から1つの地点に送る方式とは異なり、複数の地点に同内容のデータを送ります。パケット単位で発信されたデータは、途中で複製が実施されて、複数の受信用の端末に届くようになっています。複製が実施されるのはルータなどの機器であり、受信用の端末には依存していません。
インターネットが普及した現代において、マルチキャストの重要性はますます高まってきました。光通信による大容量のデータ送信が可能になったことが大きく影響しています。インターネットの黎明期には、企業や研究機関のテレビ会議などでしか複数個所への映像配信は行われていませんでした。しかしネットワークの高速化によって、一般人でも気軽に映像配信を行える時代になっています。そのため、マルチキャストによって多くの人にデータを送信する技術が日常的に用いられている状況です。
単一のパケットを複数の宛先に送信できるので、送信側への負担が少なくて済むことがメリットとして挙げられます。たとえば、50台の受信端末に送る場合でも、1つのパケットを用意するだけで構いません。さらに宛先を管理する負担を減らせることも大きなメリットです。単一の相手とやりとりする方式だと、複数の相手に送る場合は、IPアドレスをわざわざ変更しなければなりません。そのような手間がかからないため、送信先が多いほど恩恵が大きくなっていきます。
一方でデメリットとしては、構築が難しいと見なされて、技術者以外には敬遠されがちなことが挙げられます。単純にインターネットを利用するだけなら意識しなくて良いことも、理解の低下を促しているのが実情です。さらに一方向の通信で使えるTCPを利用できないこともデメリットの一つです。高度な工夫を行うことで利用できますが、専門知識が必要であるため一般ユーザーが行うのは現実的ではありません。