奨励金
奨励金とは、携帯電話の販売店が新規に顧客を獲得したときに携帯電話事業者から受け取る報奨金のことを言います。契約奨励金やインセンティブなどとも呼ばれています。携帯電話事業者にとって他社のシェアを崩すことは重要な課題で、それを実現するには全く新しい利用者を獲得するか、他社のユーザーを乗り換えさせることが重要です。そこで新規利用者を獲得できた代理店に対しキャリアから支払われるのが、この報奨金です。金額的に大きいため、代理店も力を入れて販促を行うためシェア拡大に大きな効果が期待できます。
代理店ではこの奨励金を活用して、格段に安い価格で端末を消費者へ提供するようになりました。安くても奨励金の一部が得られるおかげで、十分な利益を稼ぐことができるようになったからです。消費者にとっても代理店にとってもうまみのあるこのシステムのおかげで、携帯電話は急速に日本社会に普及していきました。
しかしこれにも欠点があります。まず割引原資は利用者の通話料金から支払われていることです。いわば自分が毎月払っていく費用を前借りする形で消費者が安く端末を手に入れていることになります。しかも長く使い続ける人ほど毎月の支払いから割引原資が引かれていくことになり、損をする形になる利用者も出てきました。
このような歪んだ状況を鑑みて、総務省はインセンティブを取りやめるよう通達を行いました。代わりに利用者は自分の代金だけを支払うようにし、長く使い続けるほど割引率が良くなるシステムを構築するよう促したのです。
通達があってからは、どの販売店でも1円携帯のような格安の商品を店頭に置くことはなくなりました。しかしそれもつかの間で、ある程度時間が経つと同じような格安携帯が販売されるようになってきています。販売する側としても他社に先んじて売上を伸ばしたいため、どうしてもインセンティブにより販売価格を一時的に下げるしかないのが実情のようです。今後どうなるかはわかりませんが、新たにキャリアが参入したことで競争はさらに激しくなることが予想されます。